神戸家庭裁判所 昭和35年(家)1070号 審判 1960年12月06日
国籍 印度 住所 神戸市葺合区
申立人 テール・ジヤンドラ・ユデイア(仮名)
国籍 印度 住所 神戸市生田区
遺言者 亡ジヤンドラ・エプルジ・ユデイア(仮名)
主文
遺言者亡ジヤンドラ・エプルジ・ユデイアの遺言(一九五五年九月二日付)の執行者として
国籍 英国
住所 神戸市葺合区○○通○丁目○番地
ウイリアム・レインズ
を選任する。
理由
本件申立の要旨は遺言者亡ジヤンドラ・エプルジ・ユデイアは一九六〇月三月二一日神戸市において死亡し、申立人は上記遺言者の最終遺言(一九五五年九月二日付)により受遺者となつた。ところで遺言者は上記遺言において香港上海銀行を遺言執行者として指定したが、同銀行が就任を拒絶したので新に遺言執行者の選任を求めるべく本申立に及んだというのである。
よつて按ずるに本件記録編綴の調査官の調査報告書によれば上記申立事実を認め得るが、本件は所謂渉外事件であるから本件については我国の裁判所の管轄権の有無及び準拠法が検討されねばならない。
そこで先ず本件に対する我国の裁判所の管轄権の有無について考察するにこの点については国際的にも日本法上も確定した原則は見当らず、従つて事の性質に即して合理的な解決を求める外ないが、法例第六条が外国人の生死不分明の場合日本に在る財産について例外的に日本の裁判所に失踪宣告の管轄権を認めている点を類推すれば本件の如く日本に在る外国人の財産に関する遺言の執行者選任についても我国の裁判所の管轄権を肯認するのが合理的であると思われる。
次に本件に対する準拠法の点であるが本件の手続的な面が法廷地法たる日本法によるべきものであることは明かである。問題となるのは実体的な面についての準拠法であるが、本件は法例第二六条の「遺言の成立及び効力」に関する問題ではなくむしろ相続財産の処理に関するものに従つて相続の問題と解すべきであるから本件の実体的な面についての準拠法は法例第二五条により被相続人の本国法即ち印度法ということにならざるを得ない。
而して準拠法たる印度法によれば主文記載のウイリアム・レインズには遺言執行者としての欠格事由は存しないから本件遺言の執行者として同人を選任することとする。
よつて主文の通り審判する。
(家事審判官 角敬)